夫婦というものは、正反対の2人がくっつくようにできているようです。

「学び合う必要がある相手と一緒になる」という話を聞きますが、我が家もそうで、私と夫は正反対です。

もちろん、私にはない、尊敬している部分も本当にたくさんあるのですが、

私からすれば「理解不能」で、それゆえに思わずイライラしてしまうこともあります(まあ、お互い様だとは思いますが)。

その1つが夫の「決断力のなさ」でした。

今回は決断力のない夫にイライラしてしまった話と、そこから得た学びについて書いてみました。

転職先を自分で決められない夫

きっかけは夫が「転職をしたい」と言い出したことでした。

今の職場の人間関係が耐えられないほど嫌なので、転職したいとのことでした。

「別に好きにしたらいいよ」と私は答えました。彼の人生は彼の人生、自分の今いる場所が嫌なら、変えればいいだけの話です。

そうして彼は転職活動を始めました。そして、そのうち1社から内定をもらいました。

しかし、内定した会社から提示された条件を見ると、明らかに給与が下がっている。

おまけに、名前は出せないのですが、その企業は不祥事を起こし、最近ニュースでも話題になった会社でした。

「どうしよう?」と夫に聞かれ、私はこう答えました。

「あなたが、その会社に行きたいのなら行けばいいと思うけど、
給料も下がる、評判も悪いような会社に、今このタイミングで行く必要って本当にあるのかな?」

元々夫が勤めていた会社は、某大手企業で、給料もそれなりにもらっていたし、いわゆるホワイト企業でした。

そんな企業にいながら、年収も下がる、マスコミで叩かれているような企業にこのタイミングで行くのってどうなの?
今の環境が嫌すぎて、視野が狭くなっているだけじゃないの?
焦らずもっと別の会社も探してみたら?

というのが率直に感じた疑問でした。

それでも、夫がその会社に行きたいなら、行けばいいと思っていました。

今の人間関係が嫌なら別に職場を変えればいいだけの話だし、年収が下がろうが、生き生きとして働けるならそれでいいのではないかとも思いました。

しかし、夫から帰ってきた答えはこうでした。

「仕事内容には興味があるし、やってみたい。
でも結局、どこに行っても同じな気がするし、しばらく経ったら、“なんで俺、年収を下げてまで転職したんだろう”って後悔しそう」

そうして、彼の悩みの日々が始まりました。

決断力のない夫、即断する妻

そこから、夫はず~っと悩んでいました。

私は物事を即断でパッと決めるタイプなので、彼がグジグジと悩んでいることが、もはや理解できません。

正直「何を転職ごときで深刻に思い詰めてるんだ」という感じなのですが、やつれている本人を目の当たりにして、そんなことも言えません。

彼は実際に、その会社に勤めている後輩に話を聞くために会いに行きました。

しかし、そこで「なんで、うちの会社ですか? 元いた会社のほうが条件いいじゃないですか?」と言われ、
「やっぱり、今の会社に残るべきなのか…」とますます悩みを深めました。

さらに、友人にも会いに行きアドバイスを求め、電話で実家の親にもアドバイスを求めていました。

夫の気持ちを簡潔に代弁するなら、

今の職場は人間関係が嫌すぎて、すぐにでも逃げ出したいけれど、名の通った大手企業を辞めて、年収が下がるのはもったいない、ということなのでしょう。

彼にとっての選択肢は3つ。

・年収とか名誉とか気にせず、さっさと辞める
・今の人間関係をやり過ごせそうなら、もう少し様子を見ながら、もっといい条件の企業を探す
・今の会社で休暇をもらう

「どれを選んだっていいじゃん」と私が言うにもかかわらず、「どれを選んでも後悔しそう」と言う夫。

私はこの言葉にも少しイライラしていました。自分の人生なのに、どうして「後悔しそう」という言葉が出てくるのだろうか。

だったら「後悔しない」道を探せばいいだけの話なのに。

「どっちにしても後悔するなら、せめて年収とか雇用条件が下がらないほうがよくない?
待てば、もっといい仕事だってあるかもしれないし」

私の言葉に、彼も「そうだね、やっぱりそうするよ。会社って所詮は給料をもらうための場所だしね」と納得したようでした。

夫の決断力のなさに、ついにキレた

しかし、翌日に、彼はまた悩み始めました。

私は相手にしていられないと思い「最後は自分のやりたいように決めなよ。私はもう何も言わないから」と言って彼を放置しました。

すると、彼は「占いに行きたい」などと言いだし、しまいには実家の両親に朝晩、何時間も電話で転職について相談するようになりました。

30超えた大人の男性が、たかが転職のことで、朝も晩も、両親と何時間もずっと電話をしている。

自分の人生を自分の意志で決めることさえ、この人にはできないのか。

情けない。情けなさすぎる。

私は、彼の自立心のなさ、依存心の強さにつくづく呆れてしまいました。

「甘ったれるのもいい加減にしろ!」とさえ思い始めてきました。

相手は変わらない、変えるのは自分の見方

そんなときに、あるカウンセラーさんとお話しする機会があって、私はこの話をしました。

しかし、カウンセラーさんから返ってきた答えは意外なものでした。

慎重な旦那さんで、いい人じゃないですか。

アスナさんが思い切りのいいタイプだから、旦那さんが同じタイプだと、結婚生活が維持できないですよ。

実際、年収が下がるのが嫌だという思いの中には、アスナさんのためにという思いもあるわけでしょう。

無責任に、自分の感情だけで突き進む男性よりも、周りの意見を尊重できる慎重な男性のほうが結婚生活は絶対にいいですよ。

素敵な旦那さんだと思うけどな。もっと良い面を見てあげましょうよ。

そっか、物事は捉え方次第なんだな、とハッとした瞬間でした。

確かに「俺は俺のやりたいようにやるから!」と、いきなり多額の借金でもして新しいビジネスをするようなタイプだと、それはそれで大変だったと思います。

彼が慎重だからこそ、安定した生活基盤があり、穏やかな家庭生活があるのです。

私は自分の判断基準で彼を見て、「主体性がない」「優柔不断」だと思っていました。

しかし、見方を変えれば、彼には、物事を一時的な自分の感情だけで進めない慎重さがあり、周りの人の意見1つ1つに耳を傾けられる優しさがあるのです。

「私は私。誰が何と言おうと、自分がどうしたいかで決めていく」
という私とは大違い。

私だって見方を変えれば、人の意見を聞かない、自分だけで物事を推し進める自分勝手な人間と言えるのです。

結婚生活は無い物ねだりの連続

改めて、結婚生活とは「無い物ねだり」の連続なのだなと思いました。

きっと独断でバンバン物事を決めていく人と一緒になったらなったで、不満を感じるし、
夫には夫の良さがあるのに、私はそれを歪めて、自分の価値観を押しつけてイライラしてしまっていたんだな、とすごく反省しました。

パートナーに不満を感じたときには、自分の価値観で相手を歪めて見ていないか、相手の長所まで見失っていないか振り返ってみましょう。

パートナー自身は変わらなくても、自分の見方、接し方を変えることはできます。

私にとっても貴重な学びとなった出来事として、記させていただきました。